ここでは、在留資格「日本人の配偶者等」を持って在留している外国が離婚をした場合に、どのような点がポイントとなるのか? どのような手続きが必要になるのか? などについて説明します。
「日本人の配偶者等」で在留している外国人が離婚をすると、在留資格「日本人の配偶者等」の身分に該当しなくなります。
ですが、そのまま6か月以上が経過すると、入管のルールで在留資格の取消の対象となります。
第二十二条の四第1項七号 日本人、永住者又は特別永住者の配偶者として「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」の在留資格を有する外国人が「配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6月以上行わないで在留している」場合、「正当な理由」があるときを除いて、在留資格取消しの対象となる。
取り消される「対象」なので、6か月経過したからといって自動的に在留資格を失うことはありません。在留期間内であれば、不法滞在でもありません。
ただ、6か月以上経っていざ他の在留資格に変更しようとするときに、不利に働くことがありますので、その点は注意をした方が良いでしょう。
例外として、「正当な理由がある場合」は、取消しを行わない、とされています。
入管のHPに、具体的な事例が掲載されています。
DVで一時的に避難したり保護を必要としていたり、離婚調停や離婚訴訟中のケースを多く見ます。
「配偶者の身分を有する者としての活動を行わないことに正当な理由がある場合等在留資格の取消しを行わない具体例について」日本語版
多言語版 日本語のほか、英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、タイ語で文書が公開されています。
出入国管理及び難民認定法(入管法)には、以下の通りの規定があります。
第二十二条の五 法務大臣は、前条第一項に規定する外国人について、同項第七号に掲げる事実が判明したことにより在留資格の取消しをしようとする場合には、第二十条第二項の規定による在留資格の変更の申請又は第二十二条第一項の規定による永住許可の申請の機会を与えるよう配慮しなければならない。
「日本人の配偶者等」の在留資格の人が離婚して6か月以上経過して取消の対象となっている場合に、在留資格の変更申請や永住許可の申請の機会がありますよ、というものです。申請の「機会」」ですので、その申請が許可されるかどうかは別の話にはなります。
さて、ここから具体的に、「日本人の配偶者等」から何の在留資格に変更をするか、検討をしてみます。
6か月の取消ルールがありますので、下に挙げた手続きは正当な理由がない限り、6か月以内に行うことが必要です。
就労系の在留資格への変更
「定住者」への変更
日本国籍の子を監護・養育している人の「定住者」へ変更
DV被害者の「定住者」への変更
その他
が考えられます。一つ一つ見ていきましょう。
就労系の在留資格の種類はたくさんあります。入管のHPの一覧の中に、今しているお仕事に該当しそうなものがあるでしょうか? もしくは、これからお仕事の在留資格を目指すでしょうか?
変更申請しようとする就労系の在留資格が見つかれば、次に検討するのがその在留資格の要件です。就労系の在留資格は、ほとんどの場合、細かい要件が定められています。例えば、オフィスワークをする人の多くが該当する「技術・人文知識・国際業務」は、基本的に大卒である必要があります。
それぞれの在留資格には、学歴や実務経験の年数、取得資格といった要件をクリアしなければいけません。
仕事の在留資格に変更ができた場合、メリット、デメリットがありますので、これも考慮に入れて、仕事の在留資格に変更申請をするかどうかを決めると良いと思います。
同じ仕事に就いている間は、継続して在留することができる
再婚しても、就労系の在留資格を変える必要がない = 配偶者の有無に左右されない
許可された仕事を転職したり失職した時に、引き続き在留できない可能性がでてくる
許可された在留資格に決められたお仕事をしない期間が一定以上(例:「技術・人文知識・国際業務」なら3か月以上)ある場合は、在留資格の取消対象となりる
在留期間の更新が許可されなかったり、取消しされると、帰国の対象となる
就労系の在留資格の活動に該当しなかったり、該当しても要件を満たさないことは多くあります。
実際、「日本人配偶者等」で在留をして離婚した場合、多くの人が選択するのが「定住者」への変更申請だと思います。
ただ、この場合の変更申請にも要件があります。これらは目安にすぎずケースバイケースですので、以下の要件をクリアして立証資料を添付して申請することが重要です。
日本で3年以上、結婚していたり家庭生活が続いていたこと
生計を営むことができる資産や技能があること
日常生活に不自由しない程度の日本語能力があること
公的義務を履行している、または履行が見込まれること
必ずしも仕事をしていないといけないわけではない(状況による)
仕事の範囲に制限がない
経済的に安定すれば、3年や5年の在留期間を得ることも可能となり、永住申請が可能となる
定住者の永住申請の際の在留期間の要件は5年以上で、一般の就労の在留資格と比較して短い
入管は「日本人の配偶者等」から定住者への変更申請で認めた事例、認めなかった事例を公開しています。
この文書の特記事項を見ていくと、審査のポイントがより見えてきます。認められやすいのが、日本国籍の子を養育・監護している、相手からの暴力がある、収入がある、などですが、やはり総合的に判断をされているのが分かります。
離婚した後も日本国籍の子を監護・養育している場合は、日本人との婚姻期間が3年以上なくても「定住者」への変更申請が許可されることが多くあります。
生計を営むことができる資産や技能があること(状況による)
日本人との間に生まれた子を監護・養育していて、その子の親権者であること
実際に相当期間、その子を監護・養育していること(重要!)
尚、「配偶者の身分を有する者としての活動を行わないことに正当な理由がある場合等在留資格の取消しを行わない具体例について」日本語版 の文書の中に、以下の記載があります。
多言語版:英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、タイ語
配偶者の身分を有する者としての活動を継続して6月以上行わないで在留している場合であっても、日本国籍を有する実子を監護・養育しているなどの事情がある場合には、他の在留資格への変更が認められる場合があります。
離婚などして6か月以上、他の在留資格への変更をしていない場合は在留資格の取消対象となりますが、日本国籍の実の子を監護・養育している場合には、認められる可能性があります。
日本人からのDVが離婚原因としてあるなら、「定住者」への変更が認められる可能性が高くなります。
本人からの説明書の他、客観的な立証資料も提出する必要があります。
日本で3年以上、結婚していたり家庭生活が続いていたこと
生計を営むことができる資産や技能があること
日常生活に不自由しない程度の日本語能力があること
公的義務を履行している、または履行が見込まれること
参考 法務省 DV事案に係る措置要領の一部改正について(通達)
日本人の配偶者等」の人が離婚した場合、離婚した日から14日以内に、配偶者に関する届け出を行う必要があります。
14日を過ぎても受け付けられないわけではありませんので、過ぎていたら気づいたときになるべく早く届け出をすることをお勧めします。オンラインでも可能です。
入管 配偶者に関する届け出